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【コラム】“ビッグマッチ”は実現するのか 村田諒太 VS カネロの報道を受けて

 

【コラム】“ビッグマッチ”は実現するのか 村田諒太 VS カネロの報道を受けて
(c)Getty Images

新型コロナの影響でスポーツイベントは、軒並み中止・延期を余儀なくされた。ボクシングもその例外ではないが、3カ月のコロナ・ブレイクを経て、徐々に試合のスケジュールが発表され始めている。

そこで、俄然、注目を集めているのが、WBA世界ミドル級チャンピオン 村田諒太(帝拳)だ。パウンド・フォー・パウンド・キングの呼び声が高いスーパースター、サウル・アルバレス(メキシコ)の次期対戦相手として、急浮上してきた。

«文:牧野森太郎 フリーライター»

パウンド・フォー・パウンド・キングと、ついに対戦!?

右:サウル・アルバレス (c)Getty Images

パウンド・フォー・パウンドとは、全階級の体重差を無視して強さを比べる、いわば夢のランキング。多くの“チャンピオン”がベルトを掲げる現代ボクシングでは、より価値のある称号といえるだろう。

では、パウンド・フォー・パウンド・キングがどれくらい凄いかといえば、井上尚弥選手が第3位なのだ。井上選手より強いボクサーがいるのかぁ! そのキングと村田選手が戦うとなれば、絶対に注目だ。

サウル・アルバレス選手の通算成績は53勝2分1敗。スーパーウエルター級、ミドル級、スーパーミドル級のベルトをかき集め、2019年11月2日にはセルゲイ・コバレフ(ロシア)を11ラウンドKOに破ってライトヘビー級もコレクションに加えた。4階級制覇の、泣く子も黙るスーパースターだ

もちろん、今、最も金を稼げる選手でもある。DAZNとの契約は400億円を超えるといわれる。「次にカネロが誰と戦うのか」は、常に世界中が注目するトップニュースだ。

なお、カネロはボクシング界では誰もが知るアルバレス選手の愛称。シナモンを意味するスペイン語で、髪が赤いことからつけられた。

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ライバルたちが続々と脱落

右:村田諒太 (c)Getty Images

そのカネロの次の対戦相手に村田諒太選手が急浮上してきた。その背景には、“ライバル”たちの相次ぐ脱落があった。

2月の時点で最も有力なカネロの対戦相手は、WBAスーパーミドル級チャンピオンのカラム・スミス(英)だった。5月2日ラスベガス、という具体的なスケジュールも報道されていた。

しかし、カラム・スミスの直前の試合が大苦戦の判定勝ちだったことから商品価値が下落、同じイギリス人のビリー・ジョー・サンダースの名前が上位に入れ替わった。

ところが、3月にDVを認めるような動画を発信したとして、イギリス・ボクシング・コミッションはビリー・ジョーのライセンスを一時停止してしまった。これによってカネロとの対戦は白紙に戻った。

次に浮上したのが、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン )との第3戦(カネロの1勝1分)。しかし、これはゴロフキン側が「もう1戦挟んでから」と乗ってこなかった。

国際的なスターになるため、日本に来る

そのほかにも数人の候補が挙がるなかで、村田選手が最有力に押し出されてきた。その理由のひとつが、カネロが所属するゴールデンボーイ・プロモーションが、スカイスポーツのインタビューに答えた次の発言だった。

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「カネロはアメリカで戦うだけではなく、より国際的なスターになりたいと思っています。カネロは海外で戦うことを望んでおり、私たちは日本、メキシコ、英国で戦うことについて話し合いました」

かつてモハメッド・アリは、コンゴのキンシャサやフィリピンのマニラで、スポーツ史に燦然と輝く偉大な試合を行った。カネロがアリを意識しているかどうかは分からないが、海外で試合を行う勇気には敬意を表したい。ぜひ、日本に来てください!

村田選手が評価された要因は、ほかにもある。「ここ2戦の試合内容がいい」「国民的アイコン」「ハンサムでカリスマ的な性格」などだ。五輪金メダリストの勲章が、オスカー・デ・ラ・ホーヤ会長にとって魅力的だったというのは穿った見方かもしれないが、クリーンなイメージが好感されたことは間違いないだろう。

(c)Getty Images

逆にマイナス面もある。ひとつはカネロのウエイトだ。175bl(79.38kg)のライトヘビー級から、160bl(72.57kg)のミドル級に落として試合をするのは、かなりタフだ。前述のライバルたちを見ても、カラム・スミス、ビリー・ジョー・サンダースは、スーパーミドル級の選手だ。

また、村田選手のキャリアに強い選手との対戦がないことから、真の実力を疑問視する声もあるという。

早ければ9月に実現か?

実は、今年の初めにも、「村田、カネロと5月24日に対戦か?」と報じられたことがあった。そのときは帝拳ジムの本田会長が、慌てて、さいたまアリーナを抑えたといわれている。その後、「村田とは2020年の年末、ほかの選手と2戦したあとに対戦する」と修正されていた。

ここにきて、急に現実味をおびてきたカネロvs村田だが、いったいいつ頃行われるのだろう?

もし、交渉が順調に進めば、9月開催という噂もある。日本ボクシング協会は、中谷潤人(MT)が出場するWBO世界フライ級王座決定戦を8月21日に後楽園ホールで開催すると発表した。無観客試合ながら、一歩前進したことは間違いない。

そこに、カネロvs村田戦が決まれば、一気にボクシング熱が高まる。そのときに、会場での観戦が許されていれば最高だ。

村田選手も34歳になった。本人がかねてから望んでいる“ビッグマッチ”は、1日でも早く実現させたいだろう。

めったに見ることができないパウンド・フォー・パウンド・キングの勇姿、そして、我らがヒーローの奮闘を、ぜひ、観客席から観てみたい。

«文:牧野森太郎 フリーライター»
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」(産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。